仏像は現地人の顔になる |
仏像の衣 のつづきです。
前回に引き続き、こちら、
「ギリシャ彫刻の影響を受けた」ガンダーラ仏(@東京国立博物館)
についてです。
この如来立像の説明書きは、
ガンダーラの仏像は、ギリシャ・ローマの彫刻を思わせる西方的、写実的な表現に特徴がある。本像も、波型の頭髪、両肩をおおう通肩(つうけん)の形式で衣をまとい、衣のひだを巧みに刻んだ典型的なガンダーラ仏である …以下略
と書かれています。
この説明に限ったことではなく、
ガンダーラ仏の説明って、だいたいこんな感じです。
>ギリシャ・ローマの彫刻を思わせる西方的、写実的な表現
この、一見わかったような気分になる(笑)ガンダーラ仏の説明のしかたがね、
普通の人にとっては誤解の元と思うわけです。
この説明書には書かれてませんが、
インターネットなどでガンダーラ仏について書かれたページを読んでいると、
仏像の顔が、ほりの深い西洋風の顔立ちであることが、
ギリシャ文化の影響の一つの表れのように書かれているのを目にします。
これ、絶対違うと思います。
ガンダーラ仏の顔って、ガンダーラ地方(現・パキスタン)の人の顔そのものです。
ガンダーラは、今のパキスタン・ペシャワールあたりを中心にした、
パキスタンからアフガニスタンにかけてのエリア。
ペシャワールの博物館でガンダーラ仏を見たときに、
そのへん歩いてるパキスタン人の顔そのまんまじゃん、と思いました。
それまでは、学校で習ったとおり、
ギリシャの影響を受けたギリシャ彫刻風の顔立ちという「型」だと思ってたんですが、
パキスタンにいるうちに、パキスタン人に目が慣れてきたら、
なんてことはない、「現地人の顔」 だったのです。
パキスタンの山岳エリアやペシャワールあたりは、この仏像のように、
二重の大きなくぼんだ目、高くて薄い鼻、細い顔筋、の
非常に美しい、端整な顔の人が多いのです。口元もこんな感じで。
今はイスラム教徒なので、ヒゲを生やしてゴツイ感じになっちゃってますが、
子供や中高生くらいまでのヒゲナシの男の子を見てると、
本当に端整な顔をしています。
また、髪についても、
現在はイスラム教徒なので、短く刈って帽子をかぶっていますが、
伸ばしたらたぶん、仏像のようなウェービーな感じになるのでは?と思います。
適当な画像がないんですが、
ペシャワール辺りで見かける顔の1パターンがこんな感じ。
仏陀像と並べておきます。
目とか口元の感じ、似てませんか?
実際はもっと「ブッダ」な人見かけるんですが、画像がないのでお伝えできず残念。
画像に使わせていただいた方はアジアっぽいですが、
もっと「ブッダ」な人はもっとアジアっぽくない雰囲気になります。
こちらも ガンダーラ仏。 交脚菩薩像@東京国立博物館。
こちらは パキスタン・タキシラの遺跡にあったガンダーラ仏。
ね、おんなじような顔でしょ?
ガンダーラ仏は、
ギリシャの彫刻をマネたからこんな服装・こんな顔をしているんじゃなくて、
仏像が作られた現地の人の服装、現地の人の顔そのもの
なのです。
つまり、
仏像は、現地の人の顔、現地の人の服飾になるんですよね。
(仏像だけに限ったものではありませんが)
前回も書いた通り、
それまで仏像を作らなかった仏教で仏像が作られるようになったのは、
アレキサンダー大王の東方遠征の結果、
ギリシャ文化が流入してきて、その影響を受けたからだ、
だから、ギリシャ彫刻のような特徴がある仏像なんだ、
と、説明されています。
ギリシャの影響を受けて仏像が作られるようになった最初の地は、
このガンダーラか インドのマトゥラーか といわれてるんですが、
マトゥラーの仏像は、ガンダーラ仏のような「ギリシャ風」ではなく「土着風」。
そのへんが、ギリシャ文化の影響の結果仏像が誕生した って話の流れ的には
マトゥラー弱し、なんですよね。
でも、そういうことで、ガンダーラ仏は、
「ギリシャ彫刻の影響を受けた」から「あんなの顔立ち」をしてるんじゃなくて、
仏像が作られたガンダーラ地方の現地人の顔、ってだけの話。
マトゥラーで作られれば、マトゥラーの現地人の顔になるってだけの話です。
仏像は、現地人の顔になる。
ちなみにこちら、
カンボジアのアンコールトム出土のブッダ像(@国立博物館)。
ね。
おんなじブッダでも、カンボジアで作られれば東南アジア人の顔になるわけです。
つづく
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